夏になると涼しげな見た目でひときわ目を引く葛餅(くずもち)。透き通ったぷるぷるの食感と、きなこ・黒蜜との組み合わせは、日本の夏の定番スイーツです。しかし「葛餅」には実は二種類あり、それぞれ異なる歴史と文化を持っています。
まず「本葛餅(ほんくずもち)」は、クズの根から採れる葛粉を使って作るお菓子です。葛はすでに奈良時代から薬用植物として知られており、葛粉を使った食品も古くから存在していたと考えられます。奈良・吉野はクズの産地として有名で、「吉野葛」は今も最高品質の葛粉として知られています。
一方、東京・亀戸や関東で親しまれる「久寿餅(くずもち)」は、小麦粉のでんぷんを乳酸発酵させて作る全くの別物です。江戸時代後期、亀戸天満宮近くの「船橋屋」(1805年創業)が売り出したのが始まりとされており、独特の酸味とコシのある食感が特徴です。
現代では、両方の「くずもち」が夏のスイーツとして人気を博しています。本葛を使った葛餅は和菓子店の高級品として、久寿餅は庶民的な縁日や土産物として、それぞれの文化を守りながら愛されています。暑い夏に冷やした葛餅を一口食べれば、奈良時代から続く日本の涼の文化を体感できます。