饅頭(まんじゅう)は、和菓子の中でも特にバリエーションが豊富なお菓子です。薄皮の中にあんこが入ったシンプルな構造ながら、皮の素材・あんの種類・形のデザインなど、全国各地に無数の種類があります。実は饅頭の伝来には、鎌倉時代に来日した中国の禅僧が深く関わっています。
日本に饅頭を伝えたのは、1341年(南北朝時代)に中国・宋から来日した禅僧・林浄因(りんじょういん)とされています。彼は奈良・塩瀬で小豆あんを小麦粉の皮で包んだ「饅頭」を作り、将軍足利尊氏に献上したと伝えられています。これが日本の饅頭の起源とされており、林浄因の子孫が現在も「塩瀬総本家」として続いています。
江戸時代になると饅頭は庶民にも広まり、各地で独自の饅頭文化が花開きました。酒饅頭・蒸し饅頭・焼き饅頭など製法も多様化し、地域の名物となっていきます。群馬の「焼き饅頭」(味噌だれをつけて焼く珍しいスタイル)など、和菓子の枠を超えた食品として発展した地域もあります。
現代でも饅頭は和菓子の王道として愛されています。温泉地のお土産として有名な「温泉饅頭」、各地の銘菓として知られる饅頭など、旅先でその土地の饅頭を食べるのも旅の楽しみのひとつです。中国から来た一人の禅僧が伝えたお菓子が、700年の時を経て日本中に根付き、無数の形に発展したその歴史の厚みを感じながら、次の饅頭を味わってみてください。