第35回 ティラミスの元祖(イタリア):「私を引き上げて」という名の、大人のイタリアンドルチェ

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スプーンを入れると、ふわふわとした柔らかいマスカルポーネクリームがとろりとほどける。コーヒーをたっぷり含んだしっとりのサヴォイアルディ(指型ビスケット)との組み合わせは、甘さの中にほろ苦さが漂う、まるで大人のためのご褒美のような味わい。仕上げにふりかけたコーヒー色のカカオパウダーが、その芳醇な香りをさらに引き立てます。

ティラミス」——その名はイタリア語で「私を引き上げて(Tirami su)」という意味を持ちます。一口食べるたびに幸せな気分に「引き上げて」くれるこのデザートは、1990年代に日本でも爆発的なブームを巻き起こし、今なお多くの人に愛され続けています。今回は、このロマンチックな名前を持つイタリアンドルチェの知られざる誕生秘話をひもといていきましょう。

カカオパウダーがかかったティラミスのクローズアップ写真
コーヒー色のカカオパウダーに覆われた、ふわふわのマスカルポーネクリーム。ティラミスは五感を刺激する大人のデザート

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目次

ティラミスの誕生地をめぐる「甘い論争」——イタリア北部の小さな町から

ティラミスの発祥については、現在もイタリア国内で議論が続いています。最も広く信じられているのは、イタリア北東部ヴェネト州の都市トレヴィーゾの説です。

トレヴィーゾには「レ・ベッケリエ(Le Beccherie)」という老舗レストランがあり、オーナーのアルバ・カルピニャーニとシェフのロベルト・リングアノットが1969年にティラミスを考案したと主張しています。もともとは産後の女性に栄養を取ってもらうため、また「滋養強壮」の食として作られたとも伝えられており、卵黄・砂糖・マスカルポーネ・エスプレッソ・サヴォイアルディという基本構成はこの頃に確立されたようです。

しかし一方、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州のレストランが自分たちこそ元祖だと主張したり、ヴェネツィアの老舗が独自の起源説を唱えたりと、「ティラミス論争」はイタリアで今も続く熱い議論のひとつです。いずれにせよ、1960年代〜70年代のイタリア北部で生まれ、少しずつ広まっていったことは確かなようです。

「ティラミス」という名前に込められた意味——元気をくれるデザート

「ティラミス(Tiramisù)」は、イタリア語の「tirami su(ティラミ・ス)」から来ており、「私を引き上げて」「元気づけて」という意味です。卵黄の栄養、エスプレッソのカフェイン、マスカルポーネの豊富な脂質——これらが組み合わさった滋養豊かなデザートは、食べると本当に元気が出るような気がします。

かつてイタリアでは、体力が落ちたときや食欲がないときに「ティラミスを食べなさい」と勧める習慣があったとも言われています。名前の通り、人々を「引き上げる」力を持つデザートとして生まれたのかもしれません。ふわふわのマスカルポーネクリームをひと口食べると、心まで明るくなるような、不思議な力を感じるのはそのためでしょう。

グラスに盛られたティラミス、マスカルポーネクリームの層が美しい
グラスで提供されるティラミスは、層になったクリームとビスケットが美しい。マスカルポーネのふわふわ感とコーヒーのほろ苦さが絶妙なハーモニーを奏でる

日本のティラミスブーム——1990年代の「甘い旋風」

ティラミスが日本で爆発的な人気を博したのは1990年(平成2年)前後のことです。バブル景気の最中、イタリア料理がブームとなった日本で、ティラミスは瞬く間に「おしゃれなデザート」の代名詞となりました。

特に火付け役となったのが、コンビニエンスストアがカップ入りのティラミスを発売したことです。それまで高級レストランやホテルのデザートだったティラミスが、数百円で手軽に楽しめるスイーツとして全国に普及しました。「ティラミス」という言葉はその年の流行語にも取り上げられ、社会現象にまでなりました。

あのふわふわのマスカルポーネクリームと、コーヒーにたっぷり浸したしっとりのビスケットの組み合わせは、それまで日本人が経験したことのない斬新な味わいでした。「食べると幸せになれる」「一度食べたらやみつきになる」と口コミで評判が広がり、ティラミスブームは数年にわたって続きました。

令和のティラミス——進化し続ける「引き上げる」デザート

現代の日本では、ティラミスのバリエーションも驚くほど多彩になっています。

  • 抹茶ティラミス:ほろ苦い抹茶とマスカルポーネの相性が抜群。和洋折衷の美しいグリーンが目を惹く
  • いちごティラミス:甘酸っぱいいちごソースを加えた春らしい一品。ピンク色のビジュアルがSNS映え抜群
  • ほうじ茶ティラミス:香ばしいふんわりとした和の香りが漂う、秋冬にぴったりのアレンジ
  • ピスタチオティラミス:鮮やかなグリーンのピスタチオクリームを重ねた、リッチで贅沢な一皿

また近年は、「本格派ティラミス」への回帰も注目されています。イタリア産マスカルポーネを使い、自家製エスプレッソで丁寧に浸したサヴォイアルディ、無添加の純粋なカカオパウダーで仕上げる——そうした素材へのこだわりを前面に出した専門店が増え、ひと口目から本場の豊かさが伝わる感動的なティラミスが楽しめる時代になりました。

ホールのティラミス、カカオパウダーが美しくかかっている
ホールで作るティラミスは、切り分けた断面も美しい。ふわふわのマスカルポーネ層としっとりビスケット層のコントラストが絶品

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本格的なティラミスをお取り寄せして、自宅でイタリアンドルチェの贅沢な時間を過ごしてみませんか。特別な日のデザートにもぴったりです。

まとめ——「私を引き上げて」という名の、時代を超えたデザート

1960〜70年代のイタリア北部で誕生し、1990年代の日本で社会現象を巻き起こしたティラミス。ふわふわのマスカルポーネクリームとコーヒーにひたしたしっとりのビスケット、香ばしいカカオパウダーのハーモニーは、どんな時代の人をも「引き上げる」力を持っています。

疲れた日の夜、大切な人との特別なひとときに——ティラミスはいつだって、そっと傍らに寄り添ってくれます。次にこのデザートを口にするとき、「ティラミ・ス」という言葉の温かな意味と、イタリアの小さな町で生まれた誕生の物語を思い浮かべてみてください。きっとひと匙の美味しさが、より深く、より豊かに感じられるはずです。

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この記事を書いた人

全国47都道府県のスイーツ・銘菓を食べ歩くスイーツ愛好家。楽天市場でのお取り寄せ歴10年以上で、本当に美味しいものだけを厳選してご紹介しています。チョコレートとチーズケーキが特に好き。地方の隠れた名品を発掘するのが何よりの楽しみです。

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