ひと口かじると、外はパリッとサクサク、中はしっとりとふんわり——そして口の中でじわりと広がる、甘くて濃厚なガナッシュ。フランスの美食の都パリが生んだ「マカロン」は、まるで宝石箱のように鮮やかな色とりどりの姿で、世界中のスイーツ好きを夢中にさせてきました。
パステルカラーの丸いビジュアルはSNSでも圧倒的な人気を誇り、パリのパティスリーでは土産物として行列が絶えません。しかし実は、このエレガントなお菓子の誕生の物語は、フランスではなくイタリアから始まっていたのです。今回は、数百年の歴史を持つマカロンの知られざる「元祖の謎」を解き明かしていきましょう。

マカロンはイタリア生まれ?——「マカローネ」から始まった数百年の旅
「マカロン(macaron)」という言葉の語源は、イタリア語の「maccherone(マッケローネ)」にさかのぼります。これは「練り粉・細い生地」を意味する言葉で、マカロニ(macaroni)と同じ語根を持っています。つまりマカロンとパスタは、実は言葉のいとこ同士なのです。
マカロンの原型は8世紀のイタリア修道院で生まれたとされています。卵白とアーモンドの粉と砂糖だけで作ったシンプルな小さな焼き菓子は、修道女たちが「へそのない菓子(無駄のない食材だけで作れる菓子)」として重宝していました。この素朴なアーモンドクッキーが、後世に絢爛なフランス菓子へと変貌を遂げることになります。
転機が訪れたのは、1533年のこと。フィレンツェの名門メディチ家の令嬢、カトリーヌ・ド・メディシスがフランス王アンリ2世のもとへ嫁ぐ際、イタリア人の菓子職人たちを連れてパリへ渡ったとされています。この時に持ち込まれたアーモンド菓子の技術が、フランス菓子文化の礎のひとつになったと言われています。
フランスの「マカロン元祖論争」——各地に残る甘い誕生伝説
フランス国内でも、マカロンの誕生地をめぐる「元祖論争」は熱を帯びています。主な候補地をご紹介しましょう。
ナンシーのマカロン:フランス東部の都市ナンシーでは、フランス革命後に修道院を追われたカルメル会の修道女が生計のためにマカロンを作り始めたとされています。その店は「ソウール・マカロン(Soeurs Macarons:マカロン姉妹)」の名で今も続いており、シンプルでひびの入った素朴な外見が特徴的です。外はカリッとサクサク、中はしっとりとした食感が今も受け継がれています。
サン=ジャン=ド=リュズのマカロン:フランス南西部バスク地方のこの町では、1660年にルイ14世とスペイン王女マリー=テレーズの結婚式の際にマカロンが振る舞われたという記録が残っています。地元の菓子職人アダムが献上したとされるこのマカロンも、現代の「サンドイッチ型」ではなく、シンプルな一枚型でした。

現代マカロンの誕生——ラデュレが生んだ「二枚貝のサンドイッチ」革命
私たちが今日目にする、二枚の丸いコックを重ねてガナッシュやバタークリームでサンドした「パリジャン・マカロン」スタイルが完成したのは、20世紀初頭のことです。
パリの老舗パティスリー「ラデュレ(Ladurée)」の創業者の孫、ピエール・デフォンテーヌが、二枚のマカロンをガナッシュでつなぎ合わせるアイデアを思いついたとされています。それまで一枚型だったマカロンが、外はサクサクの外殻と、なめらかなクリームの絶妙な対比を持つ「サンドイッチ型」へと進化した瞬間でした。
ラデュレはその後、バニラ、チョコレート、フランボワーズなど様々なフレーバーのカラフルなマカロンを展開。1993年にパリ・シャンゼリゼ通りにオープンしたサロン・ド・テが世界的な話題を呼び、マカロンはフランス菓子の代名詞として不動の地位を確立しました。
日本のマカロン文化——職人たちが磨いた「和の心」
日本にマカロンが本格的に上陸したのは1990年代後半〜2000年代のこと。フレンチレストランやホテルのデザートとして提供され始め、その後ファッション誌や雑誌が特集を組むことで一気にブームとなりました。
日本のパティシエたちは、フランスの伝統レシピを忠実に再現するだけでなく、日本ならではの素材を取り入れた独自のフレーバーを次々と生み出しています。
- 抹茶マカロン:ほろ苦い抹茶のコックと、白あんを使ったガナッシュの和と洋の融合
- ほうじ茶マカロン:香ばしいふんわりした香りが広がる、秋冬に人気のフレーバー
- 塩キャラメルマカロン:甘さとしょっぱさのバランスが絶妙で、食べだしたら止まらない
- 桜マカロン:春限定のピンク色のコックに、桜の風味のバタークリームを挟んだ日本の春らしい一品

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まとめ——イタリアの修道院からパリの街角へ、数百年の美しい旅路
マカロンはイタリアの修道院で生まれ、メディチ家の花嫁とともにフランスへ渡り、ラデュレの革命的なアイデアによって現代の「サンドイッチ型」へと進化しました。サクサクの外殻とふんわりとした内側、なめらかなガナッシュが織りなす幾重もの美味しさは、数百年の歴史と無数のパティシエたちの情熱が積み重ねられた結晶です。
パリのパティスリーで行列に並んで手に入れる一箱も、日本の職人が丹精込めて作り上げる一粒も——どちらも、長い旅路を経て私たちの手元に届いた小さな宝物。次にカラフルなマカロンを口にするとき、そのひと粒に込められた壮大な歴史に思いを馳せてみてください。
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